メンタルケア無料相談と、プロのセラピスト・カウンセラー・コーチ・ヒーラー向けの私塾(代わりの利かないプロに、君はなる。)

  1. unohiromi
  2. 6 view

不快な感覚を、すぐに追い払う前に。

かゆい。熱い。落ち着かない。

不快な感覚があると、別のことをして忘れたくなる。動画を見る。仕事に集中する。気にしないようにする。

それで楽になる場面もある。ただ、「感じなくなったこと」と「身体で起きている反応が変わったこと」は、同じなのだろうか。

この問いを考えたくなる実験が、2026年8月17日、Nature Human Behaviourに発表された。

何を比べた実験なのか

研究では、健康な成人の皮膚にヒスタミンを使い、一時的な腫れや赤みを起こした。ヒスタミンは、かゆみなどに関わる物質だ。小さな針で皮膚に刺激を与える、標準的な検査方法が使われた。

そのうえで、同じ人に二通りの過ごし方をしてもらった。一つは、刺激を受けた場所のかゆみや熱感へ注意を向けること。もう一つは、映像や図形の課題に注意を向け、身体から気をそらすことだ。

最初の実験は37人、別の集団で行った二つ目は20人。三つ目は、先の参加者のうち17人に、皮膚の感覚を弱める麻酔を使って仕組みを調べた。三つとも「事前登録」されていた。これは、結果を見てから都合のよい調べ方を選ばないよう、計画を先に登録しておくことをいう。出典:原著論文

「炎症が小さい」を、数字で見る

身体へ注意を向けた条件では、気をそらした条件より、皮膚の炎症反応が小さかった。炎症とは、ここでは刺激に反応して起きた腫れや赤みのことだ。

研究の要約では、反応の大きさは「約1.5分の1」とされている。日常の言い方なら、およそ3分の2、約3割小さいということになる。二つの独立した集団を通じ、約90%の参加者で同じ方向の違いが見られた。これは「90%の人の病気が治った」という数字ではない。出典:研究機関による論文要約

たとえば最初の実験では、20分時点の皮膚の盛り上がりの大きさが、身体へ注意を向けた条件で平均3.5ミリ、気をそらした条件で5.0ミリだった。測っているものは、このような皮膚反応の大きさである。全身の炎症が一律に3割減ったわけではない。

身体からの情報が関わっているのかもしれない

研究者は、身体の感覚を伝える神経と、身体の働きを調整する神経の両方が関わる可能性を挙げている。

「感覚神経」は、熱い、かゆいといった情報を伝える道筋だ。「副交感神経」は、意識して命令しなくても働く身体の調整の仕組みの一部で、迷走神経もそこに関わる。

ただし、今回の迷走神経についての説明は、心拍の間隔の揺れなどからの推測を含む。神経の働きそのものや、免疫に至る全経路を直接確かめたわけではない。原論文の結果と考察

「注意の向け先を変えると、身体の反応にも違いが出た」という実験結果と、「なぜその違いが起きたのか」という仕組みの説明は、分けて受け取りたい。

この結果を、日常へどう持ち帰るか

ここからは、研究結果そのものではなく、私の実践への考え方だ。

身体の感覚を、いつも邪魔なものとして扱っていると、「何が起きているか」を確かめる前に、消すことばかりを急ぐかもしれない。

「身体の情報を受け取る」と言うと抽象的だが、たとえば、ずっと座っていると肩が重くなり、立つと少し変わることに気づく。その気づきから、休む、姿勢を変える、相談するといった行動を選ぶ。そういうことだ。

私が「意識進化」と結びつけたいのは、感覚を意志でねじ伏せることではない。「嫌だ、消したい」という最初の反応のあとに、身体の様子を確かめる選択肢を持つことである。

 

SET(自己編集技法)で試すなら、確かめるのは四つ

実用心理学PCMでは自己編集のための瞑想技法(SET)を数多く教えているわけだが、日常の軽い不快感に気づいたとき、次を短く確かめてみるのもSETの機会となる。

1.どこに、どのくらい広がっているか

「身体中がつらい」とまとめる前に、今いちばん分かる場所を一つ選ぶ。肩の上なのか、首の後ろなのか。指先ほどの範囲なのか、手のひらほどなのか。はっきり分からなければ、「境目は分からない」でよい。

2.どんな感じがするか

強いか弱いか。熱いか冷たいか。ずっと同じか、波があるか。「ズキズキ」「じんわり」「引っ張られる」など、普段使う言葉で表す。

正しい名前をつける試験ではない。「何となく変な感じ」から、もう少し具体的に見てみる。

3.呼吸や姿勢と一緒に変わるか

息を吐いたとき、座り方を楽にしたとき、感覚が変わるかを見る。無理に深く呼吸したり、苦しい姿勢を続けたりする必要はない。変わらないという気づきも、ひとつの情報になる。

4.気づいたあと、何が必要か

休む。作業を区切る。誰かに伝える。症状を医療者やセラピストに相談する。

観察は、その場で耐え続けるためではなく、次の行動を選ぶために使いたい。注意を向けるほどつらくなるなら、そこでやめ、周囲へ注意を戻してよい。気をそらすことまで禁止する話ではない。

 

 

「治らないのは、意識が足りない」にしない

今回の対象は、健康な成人に起こした、短時間の局所的な皮膚反応だ。長く続く炎症、自己免疫疾患、感染症への効果や、治療を置き換えられる可能性を示したものではない。

不快感があるからといって、すべて同じ原因でもない。強い症状、急な悪化、長引く症状を、瞑想だけで扱おうとしない。必要な受診や治療を先延ばしにする理由にはしない。

そして、変化が起きなかった人へ「向き合い方が足りない」と返すのは、この研究からは導けない話である。

今日の咒術。自分の注意を戻す言葉として。

この感覚は敵ではない。身体が調整に使っている情報かもしれない。

もっと日常の言葉なら、「嫌だと決める前に、どこがどうなっているか、少し確かめてみよう」。

君が今、すぐに追い払おうとしている感覚から、休むことや助けを求めることにつながる情報を、一つ受け取るとしたら何だろうか。


RING瞑想や1UNO塾の学びに関するご案内は、宇野ひろみの公式LINEから受け取れます。

参考:Mizrachi, N., Rottem, M. & Rozenkrantz, L. “Voluntary attention regulates acute immune responses in humans.” Nature Human Behaviour(2026年8月17日公開)。原著論文。事前登録された小規模実験で、実験条件下の注意と急性皮膚反応の関係を調べています。日常のあらゆる症状への一般化はできません。

unohiromiの最近記事

  1. 「兆しに気づく人」は、何を持ち続けているのだろうか?

  2. 上手に踊れなくてもいい。君の身体は、何を練習しているだろうか?

  3. 「ここではできるのに、あそこではできない」。それは本人の問題だろうか?

  4. 何十万回見られた教え。それは、誰か一人に受け継がれただろうか?

  5. グループに漂う不安。それは、君一人が整えれば消えるものだろうか?

関連記事

1UNO塾公式LINE 友だち追加!